2023年3月9日木曜日

お寺の会計、お坊さんの収入/お坊さんは税金を払わなくてもいいのか?

  総代会のこと(「3月8日(水)総代会をしました。」)をブログに書きましたので、その関連で。

 お寺の会計と僧侶の収入等について、あまり一般にはその実情が知られていない(というか、むしろ誤解の方が多い)ので、その一端を知っていただけたらと思います。


 ◎お寺は、予算・決算を報告して運営しています。

 お寺は宗教法人の運営であり、宗教法人の運営は、予算に基づいて行われています。
 年度終わりには決算をまとめ、予算も決算も西正寺の場合は、総代会に報告し、承認を得ています。

 なににどれだけお金をつかうか、将来の修復や建て替えのためにどのようにお金を積み立てていくかを考えて予算を組んでいます。しいて言えば、行政や、NPO法人の運営にも似ていると思います。(この辺りはあまり詳しくありませんが、企業の経営もそうなのかもしれません)

 今のところは、総代さんに提示して、承認・報告をいただいていますが本来は、もっと多くの方に公開していく必要があるように感じています。これも一つの課題であると感じていますし、近い将来には、西正寺の会計は、可能な限り(とはいえ、フルオープンには高いハードルがあるのですが)公開できる範囲を広げていきたいと思っています。

◎お坊さんの給与はどうなっているのか?

 お坊さんの収入はどうなっているのか?というのは、あまりその実情が知られていないところのように思います。 西正寺の場合は、「給与」です。毎月決まった額を月給として、お寺から銀行口座に振り込んで頂いています。

 固定なので、お参りがたくさんあったとか、お葬式があったとかで、金額は変わりません。(つまり、どれだけお参りやお仕事をしても、給与は一定の額をいただいています)

 賞与/ボーナスといった類のものも(それだけ複雑なことをする余力がないということもありますが)ありませんので、毎月毎月、一定の額の給与がお寺からいただいているという形です。(その額も、上に書いた「予算」で織り込まれていますので、総代さんたちは、私の月給もご存じなのです)。

 ということで、私の収入の柱は「サラリー/月給」ということです。


◎ お坊さんは税金を払っていないというのは本当なのか?

 さて、巷ではしばしば「お坊さんは税金を払わなくてもいい」と言われているようです。
 お参り先でも、「確定申告」の話をしたりすると、「え?お坊さんも税金払ってるんですか?」とか、「なんで税金払うんですか?」みたいなリアクションもあるので、毎回誤解を解くために、「払っている」という説明をしています。

 (確定申告は、先日無事に終わりました)

 ということで、結論を言うと、「お坊さん(私も)税金を払っていますよ!」ということです。これは、声を大にして言うておきたいと思います。

 さらにいうておくと、私の所得税等には、別段の優遇もなく、お坊さん以外の皆さんと同じように、税率がかかって、所得税、市県民税のほか、自動車税も、ガソリン税も、もろもろの税金がかけられています。基本的に「お坊さんだから払わなくていい税金」というのは、存在しません。


◎ 「お寺」(宗教法人)と「お坊さん/僧侶」(個人)は違うもの。

 この「お坊さんは、税金を払っていない」という誤った情報は、おそらく、「宗教法人」としてのお寺と、宗教者とはいえ「一個人/一市民」が、混同していることによるのだろうと思います。 

 ・宗教法人である「お寺」(※)

 ・個人、一市民、一国民である「僧侶」

は、しばしば混同されることがありますが、両者は別物です。

 ですので、「お坊さんは税金を払っていないからずるい」というのは、そもそも事実ではありません。事実の誤認であるので、これについて議論する余地はない(必要ない)と言うことになります。
 一方、「お寺」(宗教法人)は非課税ですので、これについてはいろいろな議論があるというのも事実です。

 ※宗教法人には、認可必要であり、お寺や神社、教会の中には宗教法人格をもっていないものもあります。それらの活動については、「宗教法人ではない」ため非課税の優遇措置はなく、一般企業や団体と同様に「事業税」やもろもろの税金が課税されます。


◎宗教法人は、完全に非課税かというと、そうでもないという件。

 宗教法人は、本来の業務(宗教活動等)とそこにかかわる財産は非課税で、税金がかかりません。具体的な例を挙げると、

 ・お布施による収入(お寺に入るもの)に対する税金
 ・宗教施設の敷地、建物の不動産等に対する税金(「固定資産税」)

ただし、宗教法人であっても、本来の業務に該当しない、営利的な経済活動と認められるものについては、課税対象で税金がかかります。これも具体的な例をあげると

 ・駐車場や不動産経営による収益(課税)
 ・本来的な活動と関係のないイベントや物品の販売による収益(課税)

 あるいは、宗教活動とは認められない、本堂や施設の貸会場的なものも、場合によっては収益事業と認められれば、課税対象になります。

 具体的なケースは、本文末尾に添付した資料「文化庁 令和5年度版宗教法人の税務(PDF)」をご覧ください。


◎宗教法人の非課税は、特別待遇なのか?

 「お坊さんは税金払っていない」(特別待遇されていてずるい)と認識は、そもそも事実ではないと述べました。 おそらくそれは「宗教法人であるお寺の収入等は非課税である」(※ただし、営利事業は課税対象、また宗教法人格をもたないお寺/教会は課税対象)と混同されたものではないかと思われます。

 では、「宗教法人(お寺)が非課税で、ずるい」といわれたりしますが、これも必ずしも「宗教法人(お寺)」のみに限った話ではなく、公益法人、社会福祉法人、学校法人等もほぼ同様の扱いがされています。

 例えば、以下の様な資料にまとめられているのを見ることができます。

 ・財務省「公益法人などに対する課税に関する資料」
   https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/c05.htm

 ・鈴鹿市「法人の種類と課税の取扱い」(PDF)   
   https://www.city.suzuka.lg.jp/kouhou/life/benri/pdf/tax_05.pdf

 要は事実として、「宗教法人だけ非課税でずるい」という批判や問題意識は当たらないと考えています。というのは、宗教法人に限らず、公益法人、学校法人、社会福祉法人など、営利を目的としない活動をする法人、公益性のある法人等は、税制上の配慮が行われています。

 なぜ、非課税なのかということについては、

 ・その法人の活動に公益性があると認められるから。

  という考え方と、

 ・そもそも法人税には「個人の所得税の前取り」という性格があり、
  (収益の分配を行わない)非営利活動には、その必要が当てはまらないから

 という考え方があるようです。この辺りはもう少し勉強してみたいと思うところです。
 ひとまず、私の知るところまで。


【資料等の紹介】

 ・文化庁 令和5年度版 宗教法人の税務―源泉所得税・法人税・地方法人税・消費税・印紙税―(PDF)


 

 


  

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