2004年11月8日月曜日

『ブッダを語る』

前田専学『ブッダを語る』 NHKライブラリー



正直、私には持っている知識として重なる部分が多くて、新しい発見は少なかった。

でも、いちいち典拠が挙げられ、また幅広い視野から、ブッダ像やインド思想の背景が述べられているから、決して悪い本と言えない。むしろ、好書。



思い出深いエピソードがある。



著者の前田先生というのは、先代の日本印度学仏教学会の理事長で、元東大教授。

2002年の夏に、大谷大学の集中講義を持たれていたので、一週間、講義を受けに通った。

専門ではなかった上に、こんな先生から教えていただけることはめったにないと、一週間は自分なりにかなりがんばって勉強した。



で、テキストになっていた本、『インド思想史』、も一生懸命読みました。



で、どうしてもわからない言葉にぶつかったんです。

「再生族」

という言葉でした。

当たり前のように使われてて、その言葉の意味も解説されてないので、「なんだろう?」と



次の日の講義の合間に、前田先生に質問したんです。

そしたら、

「ああ」

「再生族ってのはね…、で、再生族っていうんです。で、こんな格好して旅に出てね。…身分としては…でね。……」



すごかったです。

結局再生族ってのは、インドのある階級以上の人は、老年期になると家督を息子なりに譲って、遊行の旅に出るんだそうです。それは、新たな人生という意味で「再生」。

で、再生族だそうです。



すごいなぁト思ったのは、その知識。

こっちは一言きいただけなのに、意味だけではなく、その文化、風習や格好、などなどなどなど。

軽い小石を投げただけなのに、どか~んと岩が投げ返されてきたような衝撃。



そして、その内容もめちゃくちゃすごい。&深い。

なのに、平然と当たり前のように話すんです。



ああ、こんな人の近くで毎日勉強していたら、すごい刺激だなと。

どんだけやっても、軽く跳ね返されそうな壁でした。



プロの学者ってオーラに包まれた夏でした。



あんな風になりたいと思った方の一人です。



あの夏から、ちょっと自分の勉強の仕方も変化があったんだと思います。





一年に数度、学会の懇親会でお顔を見かけることがあるので、挨拶に行くと。



「ああ、君、おぼえとるよ。 あの時はたのしかった」



いつも笑顔で応えてくださいます。

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