青木新門『納棺夫日記』
仕事柄、火葬場の人や葬儀屋や僧侶たちと会っているうちに、彼らに致命的な問題があることに気づいた。
死というものに常に向かい合っていながら、死から目をそらして仕事をしているのである。
自分の職業を卑下し、携わっているそのことに劣等感を抱きながら、金だけにこだわる姿勢からは、職業の社会的な地位など望むべきもない。それでいて、社会から白い目で見られることを社会の所為にし、社会を恨んだりしている。
己の携わっている仕事の本質から目をそらして、その仕事が成ったり、人から信頼される職業となるはずがない。
嫌な仕事だが金になるから、という発想が原点であるかぎり、どのような仕事であれ世間から軽蔑され続けるであろう。
(p. 32)
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