抜書き 青木新門『納棺夫日記』

青木新門『納棺夫日記』
 死を忌むべき悪としてとらえ、生に絶対の価値を置く今日の不幸は、誰もが必ず死ぬという事実の前で、絶望的な矛盾に直面することである。
 親戚や知人といった身近な他者の死に出会っても、一時的に愛惜の念が起きるだけで、日頃自らの死を認知していないため、他者の死は他者の死であって、他人の死は仏教でいう機縁とはなりえなくなっている。
 例えば、「……朝には紅顔ありて、夕には白骨となれる身なり……」と蓮如の「白骨の章」を読み上げても、ほとんどの人は驚かなくなってしまっている。
 既存の宗教は、時代の変化についていけないようである。人生の四苦である生・老・病・死を解決することが本来の目的であったはずの仏教が、死後の葬式や法要にスタンスを移し、目的を見失ったまま教条的な説教を繰り返しているという有様である。
 しかし、そんな僧侶たちとは無関係に、みぞれの中で大根を洗うこの地方の老婆は、梢に残った木の葉が一枚落ちる度に、「なんまんだぶつ」と口ずさんでいる。

(39-40頁)

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